東京大学教養学部(前期課程) 歴史学・世界史論

講義題目 モンゴル帝国が世界史に果たした役割
                                                         非常勤講師:宮脇淳子

時間割コード

31080

授業科目名

歴史と文化

科目区分

総合科目B(国際・地域)

曜限

金2

教室

1312教室

授業の目標、概要

日本で教えられている世界史は、第二次世界大戦後の学制改革で、戦前の西洋史と東洋史が合体してできた。西洋史は、ヘーロドトスが紀元前5世紀にギリシア語で書いた『ヒストリアイ』に始まる地中海文明から現代の西欧にいたる歴史で、東洋史は、司馬遷が紀元前1世紀に書いた『史記』に始まる漢字文明の歴史である。両者は過去の説明の仕方も世界観も異なり、近代まで交わることもなかったために、日本の世界史は筋が通らないままなのである。これら東西文明をつないだのは実は13世紀のモンゴル帝国で、それがヨーロッパの大航海時代を引き起こした。本講義は、従来の西洋史と東洋史の枠組みを離れて、中央ユーラシア草原に軸を置いて世界史を見直すことを目的とする。モンゴル帝国は、現代のロシアと中国の形成にも大きな役割を果たしたが、今日のモンゴル国になったのはどのような経緯だったのか、さらに19世紀になって世界史に登場した日本が、朝鮮や満洲で果たした役割を、大陸側からの観点で理解することを目指す。

授業のキーワード    世界史、モンゴル帝国、ロシア、清朝

1

 なぜ「世界史はモンゴル帝国から始まった」というのか

2

 日本における世界史の成立事情

3

 歴史の父ヘーロドトス著『ヒストリアイ』の世界観

4

 シナ文明の歴史の父司馬遷著『史記』の歴史観

5

 東西をつなぐ中央ユーラシア草原

6

 モンゴル帝国の継承国家とチンギス統原理

7

 シナ(チャイナ)とは何か、草原から見たシナ史概説

8

 モンゴル人のロシア支配とロシア人のシベリア進出

9

 モンゴル人のチベット仏教への帰依

10

 モンゴルを合併した満洲人が清朝を建国

11

 最後の遊牧帝国ジューンガルと露清関係

12

 ロシア革命と20世紀モンゴルの民族運動

13

 日本の大陸進出と満洲帝国の建国

授業の方法

講義形式で進め、資料は毎回レジュメを配布、図版や地図などの参考資料はPPTデータにしてスクリーンに映写する、理解度の確認を行なうために、毎回、感想や質問などを提出する。

成績評価方法

期末の論述試験を主とし、講義中随時課す小テスト・小レポートなどの評価と、毎回提出する感想を加味して判断する。

参考書

必読:岡田英弘『歴史とはなにか』(文春新書)、同『世界史の誕生』(ちくま文庫)。
その他の参考文献:岡田英弘『中国文明の歴史』(講談社現代新書)、同『モンゴル帝国の興亡』(ちくま新書)、同『読む年表、中国の歴史』(ワック出版)。宮脇淳子『どの教科書にも書かれていない日本人のための世界史』(KADOKAWA)、同『日本人が教えたい新しい世界史』(徳間書店)、同『モンゴルの歴史』(刀水書房)、同『世界史のなかの満洲帝国』(PHP電子書籍)など。

 履修上の注意 必読参考書は必ず読むこと、その他の参考文献はその都度紹介するので、不明の点は各自自習を心がけること。